Okey-Dokey オキドキ|時計旋盤・工具・ウォッチメーカーツール

時計師が営む機械式時計用工具輸入販売(主に時計旋盤整備・販売)Okey-Dokey オキドキ

時計師が営む機械式時計用工具輸入販売|Okey-Dokey オキドキ

時計旋盤整備・機械式時計用工具販売店
Okey-オキDokeyドキ

時計旋盤―この愛すべきツール

私ができること

旋盤の起源に関しましては、古代エジプト時代には既にその存在の可能性が認められているようです。
16世紀には実際の旋盤装置が絵の中で描写されており、その歴史の長さを物語ってくれています。その起源がいずれにあるにせよ、素材を回転させた状態で加工を行えば、なんなく円形状の物を獲得できるという至極単純な発想がベースにあったことは、まず間違いないところだと思います。
円形に加工するという、そのシンプルさがベースではありますが、時計旋盤の分野におきましては、多くの精密作業目的に応用され、時計を扱う多くの人々に貢献し続けてくれています。

現代においては、様々な工作機械があふれ、コンピューター制御による高度な加工も可能になっています。そうした状況下にあっても、この腕の中に抱えられるほどの小型で単純な構造の時計旋盤がその存在意義を少しも失ってはいない事実を可能な限りお伝えできることを願い、このホームページを開設いたしました。

また、販売にあたりましても、中古品とはいえ、当然回転精度に狂いがない良品のみを販売することで、時計旋盤の世界への入り口に立たれた方のみならずベテランの方々もが、戸惑わずにすむようできるだけのお手伝いをさせていただけたらと強く願っております。
不思議な魅力を持つ時計旋盤の世界を、複眼的視点からご紹介ができるよう、可能な限り試みてまいりたいと考えております。

Okey-Dokeyの加工技術

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良くも悪くも例外はありますが、当方へ入荷してくる中古時計旋盤の振れ精度は、平均値でとらえれば10μ~15μほどになってしまっていると思います。
当方が整備を施したヘッドストックの回転精度を動画にてご確認ください。
インチキをしていると邪推される可能性を考慮して、これまではあまり表立っては公開してこなかったものです。
ワークとして直径誤差がほとんどない専用のピンゲージを掴み、その外径をコレット直近位置でミツトヨ製ダイヤルゲージにて計測をしております。

一目盛りは100分の1mmではなく、1000分の1mm(1μ)です。
測定時の条件としましては、振れの検知出来ないコレットチャックを使用し、ピンゲージ装着に際しては指先での芯出しを行い、ドローバーのハンドルを指先で回転させるのではなく、安定した駆動力を与える為に極低速での回転が可能な三相モーターで駆動するといった前提が必要になります。

しかしながら、掴み方によりましては1~2ミクロンほどゲージの針が振れることは当然あります。ミクロンの調整とはそうした範疇の事であることをご理解ください。
また、チャックとピンゲージにも、当然わずかながら誤差があるはずですが、ダイヤルゲージの最小測定単位である1μまでは、通常はゲージの分解能が及びませんので検知することができません。振れゼロの測定値は、その為に起きる現象です。

また、ピンゲージなどを使用せずに、スピンドル内径顎部分を、レバー式ダイヤルゲージで直接測定した結果の振れゼロ値は、高精度なヘッドストックの必要条件ではありますが、十分条件には決してなり得ません。実際の精度を決めている要素は他にも数多くあるからです。
にわかには信じていただけないかとも思いますが、時計旋盤の精度を決める要素としては、今ざっと数えてみただけでも20項目ほどはあり、整備ではそのすべてをチェックし、必要に応じて調整を行っています。
難しいのは、その順番を間違えると施したそうした調整が途中で意味を失い、再調整の必要がでてしまうという点です。
機会あるごとに私が述べてきた、単純とも思える構造でありながら実は奥が深いという意味あいが少しでも伝わってくれることを願っています。

私にできること

時計旋盤を供給させていただく上で、皆さんが一番関心を持たれる点であろう回転精度の改善に関しまして、ここで私にできることと、できないことを明記させていただきます。

そのことに言及するためには、まずスピンドル(主軸)の軸受け構造に関しまして簡単に書かせていただく必要があります。

ダブルコーン|コーンベアリング

軸受(ベアリング)構造について

時計旋盤の軸受には、コーンベアリング(すべり軸受)と、ボールベアリング(ころがり軸受)があります。

私が販売する時計旋盤の多くがすべり軸受、主にコーンベアリング旋盤です。
すべり軸受には、フラットメタル(平メタル)軸受もあり、造りによっては精度に秀でた物がありますので、当方でも一部扱いがありますが、これはまた別項にて言及させていただきます。

コーンベアリング構造をごく簡単に説明をいたしますと、スピンドル側(主軸側)とハウジング側(受け側)それぞれがダブルコーン面(2種の角度のテーパーで形成されている軸受)を介して接しており、お互いをごく軽く研磨しながら回転をしている様子をご想像ください。
欧米でボールベアリング旋盤が発売されるまでは、標準的な仕様として、多くのメーカーによって生産され、専用機としては1970年代頃まで販売が続けられました。

私にできること

一方、ボールベアリング仕様の時計旋盤は、当初は主にアメリカのメーカーであるLEVIN、DERBYSHIRE、MARSHALLなどにより製造されていました。回転時の発熱量が少なく、長時間の使用にも支障をきたすことがないため、コーンベアリングからの発展形として製造が開始された当時は、その精度と合わせて注目を集めました。

しかしながら、ボールベアリング旋盤において、当時、本当の意味で成功を収めたのは、ボール(転動体)へのプリロードを斜め方向からかける機構(Preloaded angular contact ball bearing)においてアドヴァンテージがあったLEVIN製のみであったという評価は正当なものであったと考えます。
一般的なボールベアリング旋盤の場合では、実使用を続けたあとのチャタリング(細かな振動・ビビリ)の発生の問題や、また作業中のちょっとした衝撃に弱い点があり、良好な精度を保つためには、頻繁にボールベアリングの交換が必要となってしまうという弱点がありました。
そうした問題があって、当時の多くのユーザーがコーンベアリングの使い勝手の良さをあらためて認識することになり、再評価に繋がっていきました。
プリミティブな構造であっても、適正な調整を行いオイリングにさえつとめれば、ボールベアリング機構と全く遜色ない精度が得られるという認識を改めて持つようになり、その後、頑丈で扱いに気を遣わずに済み、またメインテナンスに費用が掛からないコーンベアリング旋盤が中古市場での中心的存在へと回帰していくこととなりました。

Okey-Dokey時計旋盤

一見すると単純な構造のコーンベアリング旋盤なのですが、実際は精度に影響を与えている要素は意外なほどに多く、そうした要素を個体ごとに徹底的に精査し改善していくことによって、ほぼ振れが検知できない状態にまで持っていくことが可能なのです。
そうした精度を阻害する要素を持っていたのは、実のところ中古品に限られていたわけではなく、当時の新品の時計旋盤であっても調整不足な状態で市場に出されていた物が想像以上に多かったのです。

皆さんも良くご存じのドイツのG.BOLEY社の未使用デッド品も何度も扱ってまいりましたが、そのままである程度精度が出ている個体もありましたが、基準のおき方にもよると思いますが、むしろそのままでは使用に問題のある物の方が多くあったように思います。

勿論これは、根本的な設計に問題があったわけではなく、精度を出す上で重要な部分の製造精度や、量産された後に押さえておかなければならない各部の調整不足にその原因があっただけですので、それらに手を入れることで全て素晴らしい状態で使用できるようになってくれました。

たとえ新品であってもそうした状態であったわけですから、中古品として通常最低でも50年以上の使用歴を持つ個体を入手することになる、現在の市場におきましては、残念ながら精度の狂った状態の物が当然のように取り引きされ続けてきたという実情があります。そうした環境がもたらす結果として、振れのある悪い状態の物がスタンダードであると思われてしまい、その状態を甘んじて受け入れて使用を続けているという方がとても多いのではないかと危惧いたしております。

一方で、比較的良く語られる話題として、たとえ旋盤の回転精度に多少問題があったとしても、切削を進めればワークはすぐに真円になるから問題はないと主張される方がいられますが、この考え方にはかなり無理があります。
ベテランの方々は当然ご存じのことと思いますが、こうした場合には、意図的な切削をしない限り簡単に真円になってくれることはないのです。特に極小径のワークを手バイトで加工する時計旋盤ではなおさらのことですし、極小径のワークには、その意図的な切削は無理な場合がほとんどです。

また少し違う意味合いですが、真円ではない、楕円や三角形状の要素を持つワークは、多くの場合で、切削を進めていっても、元々の形状をどうしても留めてしまいます。
この点では、天真製作時にホゾがどうしても三角形になってしまう為に、旋盤から下ろした後に、ジャコツールによるホゾ磨きが推奨される事実を待つ必要もないかと思います。
たとえ振れがない状態であっても、そもそも極小ワークを真円に加工すること自体が非常に難しい作業なのです。

当方では、1μでも高精度な回転軸を実現する為に、コーンベアリング旋盤の修正に血道をあげてきたということもあり、自信をもって提供できるコーンベアリング旋盤を中心に提供を続けてきたわけなのですが、その良いところをさらにあげますと、ある意味でという前提は付きますが、回転をすることで、わずかではあっても自分自身の精度を回復する可能性を持っているという点も見逃せません。

ただし、正しく使っていても(多くの場合で、正しく使用されてきたとは言えない物がどうしても多数派ではあります)、長期間の使用に伴い、精度に狂いは生じますし、また摩擦面の偏消耗も当然生じます。しかし、そうした狂いは修正が可能ですし、偏摩耗面は切削・研磨することで元の状態に戻すことが可能です。

こうした作業が私にできることです。

しかし、私にも精度を回復させることができない状態の物がある一定の割合で存在いたします。
それは、ヘッドストックのハウジング側コーンベアリングが、何らかの要因で一度外れてしまった物です。

多くの場合では、オイルの欠如、過度の熱、長期に渡る放置に起因するスピンドルの錆による固着等がその要因となります。その結果として、スピンドル側とハウジング側のベアリングが焼き付いてしまう、あるいは錆により完全な固着状態となってしまい、それを無理にハンマーなどで叩き出す必要に迫られて、本来簡単には外れないはずの、ハウジング側の軸受がスピンドルと一緒に外れてきてしまったというものです。

せめてそのままの状態で私の手元に来ていれば、100%にはならないこともありますが、多くの場合で使用に適する状態に戻すことができるのですが、信じられないやり方として、電動工具に何らかのエンドミルを付けて回転させ、ハウジングに傷を付けて内径を小さくしようと試みたような物なども多いのです。あるいは、いわゆる三角ポンチで叩いて傷を付け、嵩上げを試みた例もあります。どちらにしても、これをやられては、精度を出す時の証とする部分が破壊されている訳ですので、基本的にはどうすることもできません。

大型の工作機械があれば、またなんらかの手法があるかとも思いますが、マンションの一室で仕事をしている私にはどうすることもできません。その様な乱暴なことをする人がいるはずがないとお思いになられる方が多いと思いますが、こうした個体に遭遇してきた経験は皆さんが想像する以上に多いのです。

わざわざこのことに言及いたしましたのは、こうした破壊された個体は、意外に多く流通しているという事実をお伝えしたいがためです。
メーカーによって構造が違い、外れてしまった軸受を叩き込むだけで、取り敢えずは外れなくなる物もあり、そうした場合には、新しい所有者は精度の悪さは認識しても、根源的な問題を抱えていることには気が付かないままといった状況におちいることになるのです。
軸受が動いていることを認識した上でそのまま転売されてしまうケースを含めて、精度に満足できないが為に所有者が次々と変わっていくという悪い連鎖が、長年にわたり繰り返されてきたであろうことは疑いのないところです。

Okey-Dokey時計旋盤2

オイルを注すことを知らずに使用を続ける人や、さらに加えて過度の熱を持てば取り返しのつかない状況になるという事に考えが及ばないユーザーも意外なほどに多く存在するのです。
こうして繰り返されてきたババ抜きゲームの結果として、私にも手に負えない極端な状態の不良物件達は、今も私のストックルームで何台も眠っています。
海外の比較的良質で専門的なサプライヤーであっても、そうした問題の有無をチェックする能力はありませんし、そもそもそのつもりすらないのが現実です。

こうした状態の旋盤の完全な精度回復は私にはできないことです。

それでも、これまで多くの時間を費やしてこの問題児達の修理にも当然挑戦してきました。
2か月ほどの間、通常の仕事はほとんどせずに、そのことだけに没頭していた時期もありました。

完全には破戒されてはいない個体であって、コレット直近位置での計測であれば、ほとんど振れのない状態が作れることも多くなりましたが、いわゆるエンドプレイ(コレットから離れた位置での振れが大きくなる状態)が通常よりも大き目になる傾向がどうしても残ってしまいがちになります。
二つのハウジング側軸受けの位置関係に狂いが出てしまい、この修正がどうしても完全なものにはなってくれないのです。

ただ、今現在では、状態にもよるのですが、この傾向をある程度小さくすることもできるようにはなりました。
ヤフオク等のオークションで入手した時計旋盤の修正を依頼されることもあるのですが、上記の原因による精度不全である場合があり、一定のお取引履歴のある方以外には安易にお引き受けする事は避けさせていただいております。
そもそも、精度に問題を抱えているからこその修理依頼ですので、根源的問題を抱えている個体であるとの認識が所有者にない場合、事態の行方は想像に難くない為です。
常日頃から、できるだけ実際にお会いした上でのお取引をしていきたいという強い思いにはそうした理由も一因としてあるのです。十分な説明をさせていただき、相互のパーソナリティーを理解した上での長いお付き合いをさせていただけたらと、切に願っております。

一方で、私がこれ​​まで基本的にはボールベアリング旋盤を扱ってこなかったのは、例え優秀なLEVIN製品であっても、ボールベアリングの打ち替え作業において、1μの狂いもなく作業を完結することはなかなか困難なことであると判断してきたからです。
LEVIN社では、ボールベアリングの交換依頼には対応をしてくれるのですが、当然ヘッドストックの本国への送付を前提としておりますし、また、その交換費用は4,000ドルと高額に設定されています。
そこでメーカーに頼る以外の対処法を獲得するため、当方ではここ数年の間、トータルな技術向上の意味も含めまして、LEVIN製10㎜旋盤とそれに付属するマイクロドリリングアタッチメントを入手し、その整備を通してボールベアリングの研究を進めてまいりました。また、他で記述させていただきますが、そもそものスタートは当方のミリングアタッチメントの改良という命題があってのことでした。
LEVIN製の場合には、ボールベアリングハウジングユニットの強度が高く、製造精度が良いことも合わせまして、ボールベアリングの交換が及ぼすマイナスの影響を感じることは一切ありませんし、コーンベアリングで培ったノウハウが生きる場面も多いこともありまして、すべり軸受(コーンならびにフラットメタルベアリング)とボールベアリングの両立体制を整えることが叶いました。
特にマイクロドリリングアタッチメントには以前から個人的に強い興味を持っていたこともあり、整備後の実使用を通して、その有用性に大きな手ごたえを感じております。
機会を設けまして、ブログで詳細なご紹介をさせていただけたらと考えております。

またチャック精度に関しましては、高額なLEVIN製新品コレットチャック(2024年8月更新追記:現地で1番~80番の80本で $45,600 150円/$1 計算で684万円)などでありましても、振れがゼロミクロンという事はありませんので、中古のコレットチャックを使用した場合では、当然ある程度の振れは覚悟しなければならないのが現実です。
そのように考えた場合、旋盤自体の振れを最低限にしておくことが非常に重要なこととなってくるのです。

LEVIN02

最後に、少しおかしなことを書かせていただきますが、
上記したような、軸受けが極端に破壊されているヘッドスピンドルの動きは、必ず起こる事象というわけではありませんが、時として常識では考えられないような奇怪な回転痕を残します。
それは、自転軸と公転軸の両軸が狂った状態で回転を続けている惑星の動きの様だと表現したら上手く伝わってくれるでしょうか。
その傷跡から、症状を生み出している元凶のあり様を探るのですが、その時私の頭に浮かぶのは、まるで無限大の宇宙の動きの中にいるような不思議な浮遊感です。
イライラはしますが、底なしの奥深い世界を覗いているような気がしてくるのもまた事実なのです。

道は果てしがないようです。

事業所概要

事業所概要-
事業所名 Okey-Dokey(オキドキ)
代表 長谷川 脩
電話番号 044-954-7776
営業時間 10:00〜18:00
ショールーム 14:00〜18:00(要予約)
定休日 不定休
所在地 神奈川県川崎市多摩区
事業内容 機械式時計用工具輸入販売/主に時計旋盤の整備・レストア

技術者紹介

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オキドキ代表 長谷川 脩

以前は私も時計の整備をしておりました。
良質な工具は技術の足りない部分を補完してくれるとの考えから、自己使用分として時計工具を輸入するようになり、精度の悪い旋盤と格闘する内に時計旋盤整備の奥深さに魅了されてしまいました。
ニッチな世界での研究が性に合っているようです。

海外の専門ショップにおきましても、外に向けた言葉通りに本格的な整備をしているところは、実際のところ皆無と言えます。時計旋盤の回転精度を回復させる作業には、いかなる時も強い矜持を持ってあたっております。

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電話番号 044-954-7776
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ショールーム 14:00〜18:00(要予約)
所在地 神奈川県川崎市多摩区
事業内容 機械式時計用工具輸入販売/主に時計旋盤の整備・レストア

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