アメリカンベッド時計旋盤のアライメントの合わせ方
明けましておめでとうございます。かなり遅い新年のご挨拶になってしまいました。
少し仕事に余裕が出来るとつい自分が現在抱えている課題の検証と実験に時間を使てしまい、このような体たらくとなってしまいます。
しかし、国内国外を問わずに、とてもおめでとうと言えるような状況でないことも、新年を祝う言葉を書く気になれない要因かもしれません。
今日は、アメリカンベッド旋盤を使用する時の実践的なアライメントの合わせ方について書かせていただきます。
これに近いやり方を既に実践されている方も当然いらっしゃるとは思いますので、何を今更と思われる方は読み飛ばしていただけますと助かります。
ホームページの中でも述べていることですが、アメリカンベッドの場合は、フラットなベッド上面と外側のベベル部分を証として使ってアタッチメントの位置決めをしていることから、100%のサイズ的一致が難しく、アガキがあったり、あるいはごくわずかにアタッチメントが浮いた状態にあったりと、何の意識も持たずにただロックレバーを下ろせば、完全に一致してくれる個体に出会えることはむしろ稀であると言えます。
作業内容による要求度の違いがあり何とも言えませんが、完全に一致していると思える個体は、10台に1台もないというのが実際のところだと思います。
長尺物の切削時に、テイルストックを芯押し台として使用する場合などでは、それほど厳密な一致を必要とすることはないのですが(クロススライドの角度をゼロにして平行移動する場合などでも、それはあくまでも目安でしかなく、実際には切削の結果を確認しながら調整をする必要があるためです)、マイクロドリリング時などでの厳密な一致が必要な場合を想定して書かせていただきます。
簡便な対処法としては、ヘッドストックとテイルストックをそれぞれ、無造作に固定するか、手前側に引くか向こう側に押すかをした状態で固定して、どこかで一致するポイントを探すやり方もありますが、微妙な不一致が残る場合が多いですし、そのようにして固定を致しますと、今度は微妙に高さが変わってしまう事が多いですので、下記の方法を試してみてください。ただし、ベッドとのサイズ的な不一致が明確にある場合には、当然の事ですがこのやり方では対処出来ません。
コレットホールディングタイプのテイルストックの場合は、両方に先端を鋭利にしたセンターチャックを装着してください。お持ちでない場合には、精度の確認が取れているチャックで、折れたドリルビットの先端を鋭利に尖らせた物をセンターピンとして掴んでいただき代用していただいても結構です。
テイルストックが通常のタイプの場合には、出来るだけ振れのない状態になるように気を付けながら、鋭利にしたセンターピンを取り付けます。
ヘッドストックをベッド上のいつも使用する位置に置き、無造作で結構ですので固定します。両方のセンターが振れるほどの位置で、同様にテイルストックを、特に押さえ付けるようなことをせずに無造作に固定します。
まずは高さが合っていることを確認します。これが完全に違う場合は、その差異により、形状が同じようであってもメーカー違いか、あるいは同じメーカーでも規格が微妙に違う別タイプの物であるかのどちらかです。
ちなみに、この微妙に違う規格というケースは、どのメーカーであってもかなり高い確率で存在します。芯高設定は同じ50mmなのですが、厳密に見ると差異があるということです。どこかのタイミングで、組合せを替えられてしまったセットは思いの外多いのが実情です。これはあくまでも私の推察ですが、これは在庫を多く持っていた海外の専門ショップなどで頻繁に行われてきたのではと考えております。
そうした微妙な差異のあるモデルを生産してきたのは、G.BOLEYであっても、私がメインに使用するLEVINであっても同様です。
その違い方の程度で、別な規格の物を探すか、加工をして対処するかを選択することになります。
また、PEERLESSの場合では最低でも3種類の芯高設定が存在しますので、そうした差異(芯高が50mm、50.8mm、51mm強)がある場合には、同じ規格の物を探すしかありません。ebayなどでは、こうした組み合わせの物が平気で売られていることも多いのです。
ここではある程度の一致を前提に話を進めます。
微妙な不一致であれば、テイルストックのランナー軸を回して高さが一番合うところを特定し、軸の上部などに位置を決めて印を付けておきます。平均的なコレットホールディングタイプの場合で、20~30ミクロンほどの誤差がありますので、多くの場合で一致するポイントを見つけることが出来ると思います。
次に、実体顕微鏡下で上からよく見て、ヘッドストックのロックレバーを緩め、左右が一致するように微妙に動かして位置決めをし、ロックレバーで固定します。
これだけです。
試しに、テイルストックを一度右に移動させて、元の位置に戻して先ほどと同様に無造作にロックレバーを下げてみてください。
ほとんどの場合で、アライメントはしっかりと一致してくれているはずです。
これは誰もが日常的に経験していることです。つまり、左右方向のズレは、両方を無造作に固定した場合でも、いつも同じ位置関係になっているはずです。
アガキはあっても、ロックレバーを普通に操作した時には、いつも同じ位置に固定されることがほとんどなのです。
ヘッドストックは、通常の作業であれば日常的に移動させる必要はないはずですので、その状態を保つ限りは、それ以降ほとんどアライメントに気を遣う必要は生じません。
もし、微妙にずれるようでしたら、いちばん初めにテイルストックを固定する時に、真上から抑え込んでからロックレバーを下ろしてみてください。当然その場合は、毎回固定する時には、真上から抑え込むようにします。その様にした方が同じ位置に収まってくれる個体もありますので、そこだけは恒常性のある方を選んでください。
当然ですが、テイルストックに付けた印はいつも真上に来るようにして使用いたします。
一度決めた位置関係を動かさずに済む作業内容の場合には、テイルストックを作業の途中で動かさずに済ませる方が良いのは当然ですが、ランナー軸を一度取り外して先端にセットしたドリルなどの交換が出来ない場合には、このように致しますとアライメントの狂いが生じずに済むことが多いです
アライメントは狂っていないはずなのに、それでもドリルが振れて折れそうになっているといったケースも多いですが、これはまた次の機会に書かせていただきます。
2023年01月25日 15:58
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